質屋営業法
この商売には許可が要ります
質屋は公安委員会の許可を受けて営みます ── 警察です。古物商と同じ窓口ですが、別の法律で、別の許可です。古物商は品物を買って所有権を取り、質屋は品物を預かって所有権は預けた人に残します。うちは質屋の許可だけを持っていて、古物商の許可は持っていません。
質は月で数えます(一日でも一月分)/期限は三か月/ 過ぎたら品物が流れ、借金はそこで消えます/見るだけなら無料です
MITSUKI — 質屋
葛飾区立石、京成立石の駅から仲見世を抜けた先にある六坪の質屋です。一九五八年からここで、いまは三代目がやっています。このページには、月がどう数えられるのか、利息はいくらなのか、期限が来たら何が起きるのか、そして払えなくなったときに何が起きないのかを書いてあります。品物を預けるかどうかより先に、それを知ってから来てもらうために作りました。
01三月
質は月で数えます。一日預けても、三十日預けても、同じ一月分です。うちが決めた勘定ではなく、質屋という商売の数えかたがそうなっています。
数えるのは暦の応当日です。十月一日に入れたものは十一月一日までが一月分で、十一月二日に出せば二月分になります ── 一日はみ出しただけで、一月分増えます。
期限は三か月です。法律は三か月より短くしてはいけないと決めていて、うちはちょうど三か月にしています。
利息だけ入れていただければ、期限はそこからまた三か月です。元金は一円も減りませんが、月は買えます。サービスとして受けているのではなく、質屋がそういう作りになっています。
ISLAND 1 — HOW MANY MONTHS
MONTHS
4月分
三月と一日前に預けたものは、今日で4月分です。
三月を過ぎていると、この機械は請け出しに要る額を出しません。期限が切れた質は、うちが受け取るか受け取らないかを先に決める話になるからです ── その場で相談してください。うちは、過ぎたからといって門前払いはしません。
出るのは月の数です。日数ではありません ── うちは日割りで計算しないので、日数を出しても意味がありません。
目安です。実際の額は質札に書いてある元金と、その日までの月数で決まります。質札をお持ちください。
一
預かり
その日
品物を見て、いくらお貸しできるかを言います。断って帰って構いません。決まれば質札を書いて、半分をお渡しします ── 品物は蔵に入り、鍵はうちが持ちますが、持ち主はあなたのままです。
二
期限のあいだ
一月〜三月
三か月のあいだ、品物は蔵で待ちます。うちからは何も言いません ── 催促の電話も、手紙も、訪問もしません。する必要がないからです。
三
請け出し
三月まで
元金と、その月までの利息を持って来ていただければ、品物をお返しします。質札の半分をお持ちください。七割以上のお客さんがここで終わります。
四
流れ
三月を過ぎたところ
期限が過ぎると、品物の持ち主がうちに変わります。裁判も通知も要りません ── 法律がそう決めています。そして同時に、借りていたお金は消えます。足りなくても、うちからは何も請求しません。
02月利
元金が小さいほど月利は高くなります。金額が小さくても、預かって、 書いて、蔵に入れて、三月数える手間は同じだからです。
一万円まで
3% / 月
いちばん高い段です。金額が小さくても、預かって、書いて、蔵に入れて、three months 数える手間は同じだからです。
五万円まで
2.5% / 月
この段がいちばん多いところです。時計、指輪、カメラあたりが大体ここに入ります。
十万円まで
2% / 月
ここから下がります。品物が大きくなるほど、月利は低くなります。
十万円から上
1.5% / 月
いちばん低い段です。年に直すと十八パーセントで、これは世の中の貸金の上限とほぼ同じ高さになります。
月利です。年利ではありません。そして単利なので、利息に利息は付きません ── 三か月置いた分の利息を入れて期限を延ばせば、そこからまた元金だけに利息が付きます。
質屋営業法 第36条
法律は、年に百九・五パーセントまで許しています
質屋の利息の上限は、年百九・五パーセント(日歩三十銭)です。世の中の貸金は利息制限法で年十五〜二十パーセント、出資法でも年二十パーセントまでですから、質屋だけが桁の違う高さを許されていることになります。理由は、品物が担保にあること、取り立てないこと、そして期間が短いことです。
うちの月利は一・五から三パーセントで、年に直せば十八から三十六パーセント ── 法律が許している高さの、六分の一から三分の一です。良心的だから低くしているのではありません。利息が高いほど品物は流れやすくなりますが、うちは流れた品を店で売らないので、流れやすくして得るものが無いのです。
03四つめ
期限が過ぎると、品物の持ち主がうちに変わります。裁判も通知も要りません ── 法律がそう決めています。そして同時に、借りていたお金は消えます。足りなくても、うちからは何も請求しません。
期限が来る前にできることは四つあります。最後の一つは、 この店が金貸しではなくなるところです。
そのまま請け出す
一〜三月
いちばん多い終わりかたです。元金と利息を入れて、品物を持って帰ります。
利息だけ入れて延ばす
三月ずつ
利息だけ入れていただければ、期限はそこからまた三か月です。品物は蔵に残り、元金も残ります。
一部だけ返して延ばす
三月ずつ
元金を少し減らして、残りで組み直すこともできます。月利の段が変わって、利息が下がることがあります。
流す
三月を過ぎたところ
何もしなければ、品物は流れます。連絡も要りません。借りたお金はそこで消えます ── これは失敗ではなく、二つある終わりかたの片方です。
月を買い続ける
何年でも
利息だけを入れ続けて、品物を何年も置いたままにする方がいます。期限は延び続け、元金は一円も減らず、品物は一度も戻りません。この方にとって、うちは金貸しではなく蔵です ── 月を買い続けると、質屋は金貸しではなくなります。
ISLAND 2 — KEEP IT OR LET IT GO
ANSWER
請け出したほうが得です
払う額より、品物のほうが高いままです。取りに来てください。
品物の値打ちは、お客さんに入れてもらっています ── うちが出す数字ではありません。うちが言えるのは「いくらお貸しできるか」だけで、それは相場とは別のものです。
流すことを、うちは失敗だと思っていません。質屋の終わりかたは二つあって、請け出しと流れの両方が最初から勘定に入っています。
流れた品はうちの物になりますから、この機械は自分の店に不利なことを言っているわけではありません。ただ、うちは流れた品を店で売らないので、流れてもさほど嬉しくないというだけです。
04第18条
ここに書いてあることは、うちが決めたことではありません。決めたのは法律で、うちはその中で商売をしています ── 都合のいいところだけでなく、都合の悪いところも書いてあります。
質屋営業法
質屋は公安委員会の許可を受けて営みます ── 警察です。古物商と同じ窓口ですが、別の法律で、別の許可です。古物商は品物を買って所有権を取り、質屋は品物を預かって所有権は預けた人に残します。うちは質屋の許可だけを持っていて、古物商の許可は持っていません。
質屋営業法 第18条
期限が過ぎると、品物の持ち主はうちに変わります。裁判も、通知も、あなたの承諾も要りません ── 法律がそう決めています。そして同じ条文が、もう一つのことを決めています。うちが品物を処分して、お貸しした額に足りなくても、その差額をあなたに請求できません。つまり取り立てという行為が、この商売には存在しません。取り立てないのは当店の方針ではありません。質屋には、その道が無いだけです。
質屋営業法 第36条
質屋の利息の上限は、年百九・五パーセント(日歩三十銭)です。世の中の貸金は利息制限法で年十五〜二十パーセント、出資法でも年二十パーセントまでですから、質屋だけが桁の違う高さを許されていることになります。理由は、品物が担保にあること、取り立てないこと、そして期間が短いことです。
うちの利息
うちの月利は一・五から三パーセントで、年に直せば十八から三十六パーセント ── 法律が許している高さの、六分の一から三分の一です。良心的だから低くしているのではありません。利息が高いほど品物は流れやすくなりますが、うちは流れた品を店で売らないので、流れやすくして得るものが無いのです。
貸金業法
品物を預からずにお金を貸せば、それは貸金業で、別の登録が要り、取り立ても認められます。うちは品物なしでは一円もお貸ししません ── 質屋と貸金業を分けているのは金利の高さでも店の大きさでもなく、取り立てるかどうかです。
05六坪
蔵
店の奥が蔵です。温度と湿気を見ていて、革と楽器は別の棚に置きます。鍵はうちが持ちますが、中の物はお客さんの物です ── 期限が来るまでは。
質札
二枚一組で、半分をお渡しします。元金、入れた日、期限、月利が書いてあります。うちからは催促しないので、この紙が唯一の覚えです ── 無くしたら言ってください。身分証で照らし合わせます。
帳面
誰から何を預かったかを書きます。書く内容は法律が決めていて、うちが選べる欄はありません。三年は残します。
店の構え
六坪で、明るくしてあります。質屋は入りにくい商売なので、せめて中が見えるようにしておこうというだけの理由です ── 暗い蔵のような構えにすると、入りにくさが増えます。
三月
三月(みつき)は、質を預かる期限です。うちは三か月で、期限が来たら品物は流れます ── ただし利息を入れれば、その三月はまた三月になります。屋号にしたのは、うちが数えているのが金額ではなく月だからです。読みは「さんがつ」ではありません。
06断り
流れた品を、店では売りません
流れた品は業者の市に出します。店に並べないのは、並べた瞬間にうちが「流れるのを待っている店」になるからです ── うちは戻ってきてもらうことで成り立っています。だから店先に売り物が一つもありません。
買取はしません
買い取って売るのは古物営業で、別の許可が要ります。うちは持っていません。預かるだけです。
鑑定書は出しません
うちが出す数字は「いくらお貸しできるか」であって、品物の値打ちの証明ではありません。その二つは別のものです ── 証明が要るなら、鑑定を商売にしている人のところへ行ってください。
品物なしでは、お貸しできません
それをやると貸金業になります。別の登録が要り、取り立ても認められることになる ── うちがやりたいのはそちらではありません。
催促はしません
期限が近くても、過ぎても、うちからは電話も手紙も出しません。する必要がないからです。ただし、こちらから何も言わないので、期限はご自分で覚えておいてください ── 質札に書いてあります。
郵送や宅配では預かりません
品物を見ないと額が出せませんし、ご本人の確認も要ります。必ず店まで持って来てください。
他人の物は預かれません
ご本人の物だけです。身分証を見せていただきますし、帳面に書きます ── これは法律が決めている手続きで、うちの都合ではありません。
07帳場から
二月分で済みました
十月のはじめに時計を預けた方が、十一月のはじめに取りに来られました。応当日の前日だったので一月分です ── 翌日だったら二月分でした。一日の差で利息が倍になることを、預けるときに言っておいてよかったと思いました。
流れました
ギターを預かった方が、三度延ばして、四度目に来られませんでした。品物は流れて、うちの物になりました。連絡はしていません ── する道がありません。その方が損をしたかどうかは分かりませんが、借りたお金の請求だけは、うちからは一度もしていません。
何も預けずに帰られました
指輪を持って来られて、額を言ったら「思っていたより低い」と言って持って帰られました。それで構いません ── 見るのは無料ですし、断って帰るのはお客さんの自由です。半年後に別の物を持って来られました。
SHASHIN — なぜ一枚も無いのか